みなさん、ハフィントン・ポストというアメリカのインターネット新聞をご存知でしょうか?
このハフィントン・ポスト、最近何かとためになる話題が掲載されるのです。
1周年記念イベントが5月27日に開催されたのですが、それに行かれた記者の方の記事が、とっても興味深い内容となっていますので紹介します。
松浦茂樹編集長、吉田大樹氏、ミッコ・コイヴマー氏、イェンス・イェンセン氏、この記事の記者の方、長野智子編集主幹
ハフィントンポスト一周年イベントが5月27日に開催された。ぼくも参加したので、もう一週間以上経ってしまったがレビュー的なことを書いておこう。
直前に発表されたがケネディ大使がやってくることになり、松浦編集長以下ハフィントンポストのみなさんはてんやわんやだったようだ。そりゃそうだね。米国の要人である上に、あのJ.F.K.の娘なんだから。
当日、ハフィントンの編集室でぼくらが待ってるとぞろぞろといろんな人を引き連れてやって来た。意外に気さくな女性であれやこれやと話しかけている。記念写真を撮ろうとみんなで並んでいたらぼくの隣に立った。ものすごくキンチョーしながら「あなたが来ると聞いて昨日慌てて美容院で髪を切ってきましたよ」って英語でどう言えばいいか、んんんーっと考えはじめたら「大使はこちらへ」と誰かが呼びかけてぼくの隣を離れていってしまった。ま、いいけど。
編集主幹の長野智子さんとは少しだけお話できた。彼女とは同い年なので”同級生”のような感覚がある。フジテレビに在籍された頃は「ひょうきん族」で島田紳助の隣に立って”ひょうきんアナウンサー”と呼ばれていた。それがいまやアナウンサーと言うよりジャーナリストとして活躍されている。ひょうきんアナのころも楽しくて好きだったんだけど、同級生が出世したようで勝手にうれしがっていた。そしていま、時々ぼくが書いた記事をtwitterでRTしてくれたりして、その長野さんと少しだけ話ができたのは、ちょい舞い上がった。
さてこのイベントでのぼくの役割は、イクメンたちによるパネルディスカッションの進行役だ。フィンランド大使館の参事官ミッコ・コイヴマーさん、元デンマーク大使館広報官でいまは食や住のアドバイザーであるイェンス・イェンセンさん、そしてNPOファザリング・ジャパンの代表、吉田大樹さん。この三人のイクメン代表の話の司会をすることになっていた。
一周年イベントは、長野智子編集主幹の開始の挨拶にはじまり、ケネディ大使のスピーチ、ワークライフバランスの小室淑恵さんと長野さんの対談と続く。
ケネディ大使のスピーチは素晴らしいもので日本の女性たちにエールを送る内容だった。来場したとくに女性たちは感銘を受けていたようだ。
スピーチの全文がハフィントンポスト上に掲載されているので、読んでもらうといいと思う。
ケネディ大使、働く女性にエール 「小さな変化が、人生を変える」ハフポスト日本版1周年イベント【全文】
小室さんの話は現代ビジネスが記事にまとめている。
「労働時間を減らした方が、業績が上がる」 小室淑恵氏が語る「これからのワークライフバランス」
後半で来場者からあらかじめ募った質問に小室さんが答えるコーナーがあった。「夫に家事をやってもらうにはどうしたらいいか」との質問に「小さな家事でもやってくれたら褒める」という回答だった。それを聞いてぼくはハッとした。
ぼくはここ数年、土日は料理をやる。それは自分が料理が好きだし得意だからと思っている。だがそう言えば、10年くらい前に何度か料理をやったら、妻が「うちのパパは料理が上手でよかったねー」と言っていた。晩ごはんを作るたびに言っていたかもしれない。それに気を良くして土日の料理が習慣化したような気もする。・・・そ、そうだったのかー、あれは彼女の作戦だったのかー・・・いやいや、そうじゃなくて、いやそうかもしれないけど、褒められてうれしかったのだからそれでいいのだ。
そのあと、いよいよイクメンディスカッションになった。ただ、この時点で時間が押していてちょっと急がなきゃなー、というのもあり焦ってしまい、司会役たるぼくの時間配分がうまくなかった。せっかくのお三方に十分話してもらえなかったかもしれない。このディスカッションについても、現代ビジネスの記事があるのでそれを読んでもらうといいだろう。進行役としての反省はありながら、うまくまとめてもらっている。
「家事・子育てに男女の役割はない」 イクメン先進国、フィンランドとデンマークから学ぶこと
ちなみにこのイベントについては5月30日の東京MXテレビの『モーニングCROSS』という番組で紹介された。せっかくだからその放送にもふれると・・・
松浦編集長はこの放送の時スタジオにいたのだが、画面にもでーんと登場した。
さて、イベントのレビューはこんなところにしてと・・・
ここからが、ぼくが今日書きたかった本論だ。えー?まだ書くのかよ、と思うだろうけど。でも大事なことを書くつもり。
フィンランド大使館のミッコ・コイヴマーさんは「イクメンMIKKOの世界一しあわせな子育て」というタイトルで本を出している。イベントで司会役を頼まれた際、ハフィントンの猪谷記者にこの本を渡された。これは読まなきゃなとページをめくりはじめると、面白いのであっという間に読んでしまった。そしていろいろ驚いたし考えさせられもした。
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この本には事細かにミッコさんのイクメン生活が書かれている。読んでいるとほほ笑ましく、楽しくなる。フィンランドのお父さんはこんなことまでやるんだ、イクメンってここまでできるものなのかと感心するけど、それが楽しそうに書かれているのだ。フィンランドのお父さんはなぜ育児や家事をやるのか、それはそうしたいから。その方が楽しいからなのだ。そのことがよーく伝わる。そこがまず素敵だ。
それから、フィンランドには子育てのためのありとあらゆる制度が整っている。大袈裟に言うと、社会のすべてが子育てを軸に構成されている。ぼくがこのところ赤ちゃんのこと、子育ての問題を考えるようになって思い至ったのは、子育てをお母さんだけに、夫婦二人だけに任せないで、社会全体で引き受けることが大事だということ。まあでも理想論かなあと思っていたが、その理想論をフィンランドは実現しているのだ。理想は実現できる!そのことを思い知った。
そしてさらにさらに、ここがいちばん今日言いたいことなのだけど、フィンランドだってつい数十年前まではこの理想から程遠かった。子育てやイクメンのための制度が整ったのはそんなに昔のことではない。国民性や文化がちがうからイクメンが多いのではなく、長い時間をかけて社会を変えていったのだ。
フィンランドでは、日本同様に第二次大戦後、急速な工業化・都市化が進んだ。それまでは農業国だったし、男は働き女は家庭へ、だったらしい。ただ、ちがったのはフィンランドでは早くから女性も働くようになった。なぜならば労働力が足りなかったから。
フィンランドは日本とさほど変わらない広さの国土だが人口は540万人。北海道と同じくらいだ。国の経済にとって働き手の人口は大きな要素。だから女性が働く必要があったのだ。
そのため「女性は家庭」の文化だったのが、少しずつ変わっていった。1970年代までは男性が家事や育児に参加するのが普通とは言えなかった。1985年にはついに、出産後も産前と同じ仕事につくための支援が法律化された。その後は少しずつ、制度が進んできた。この十年だけでも父親が取る休暇の制度が大きく進歩している。いまの状態が整ったのはほんの最近だし、今後も進んでいくのだろう。
ここでぼくが注目したいのは、70年代までは男性の家庭参加がまだ普通じゃなかったことだ。この40年間で大きく変わった。
日本は何をしていたのだろう。少なくとも80年代には男女雇用機会均等法ができたし、90年代には少子化問題が浮上していた。なのに問題は少しも解決できていない。ぼくたちが怠けていた努力、目を背けていた問題に、フィンランドは何十年も前からちゃんと向き合ってきた。
だから日本ってダメだよね、と言える。でも、だったら日本も変えられるよね、とも言えるんじゃないだろうか。
フィンランドの人たちが向き合ってきたことに、遅ればせながらぼくたちも本気で向き合えば、状況は変えられるのだ。ミッコさんの本から、ぼくたちはそこをこそ学びとるべきではないか。
それに、ここをあげつらうのはちょっといやなことだが、フィンランドが人口の少なさに直面し変わったように、ぼくたちはこれから人口が減少する時代に突入する。人手不足が進むと、女性が働かざるをえないし、では育児をどうするかということになる。いままで目を背けてきたことに否が応でも向き合うことになるのだ。
皮肉なことかもしれないが、希望が失われるからこそ、変化への希望がもたらされる。皮肉だけど、いいことだ。
ぼくたちはフィンランドをはじめとする、北欧に学ぼう。
ミッコさんの本からはまだ学べる点があるのだけど、いい加減長くなったのでそれはまた別の回で。
とりあえず、一周年イベントも無事に終わり、松浦さん以下ハフィントンポストのみなさん、イベント参加者のみなさん、お疲れさまでした。
コミュニケーションディレクター/メディアコンサルタント
境 治
確かに日本では沢山子どもを産むと、教育費など出費が増えますね。
筆者もスウェーデンに住んでいて、まだ子どもはいませんが、こちらでは子どもが出来たら歯医者は20歳になるまで無料だし、大学までのすべての学校はほとんどただ同然だそうです。
ちなみに、筆者みたいな移民でも語学学校にただで行ける上に返済不要な奨学金みたいなものまでもらえるのです。
このの中に登場するミツコさんの別の記事では、フィンランドでは子どもが出来ると満三歳まで家庭保育給付金として毎月800ユーロ(日本円にすると約11万円)がもらえるという、日本では全く持って考えられない話!?
しかし、北欧諸国も最初からこういうふうにうまく言っていたわけではないようだし、隣の芝生は青く見えるとはよく言ったもので、例えばノルウエーやスウェーデンでは、不正をしてお金を貰っている国民もいるんだとか。
どれはやはりどこの国でも変わらないのでしょう。
ともあれ、自分の国での子育ての環境が改善すればそれにこしたことないけれども、国にばかり頼ってないで、自分で色々調べてしっかりと綿密に計画を立てていくのが重要ですね!
ハフィントン・ポスト
アメリカのインターネット新聞。
多数の異なった分野のコラムニストが執筆する論説ブログや、各種オンラインメディアからのニュースアグリゲーターで、政治、メディア、ビジネス、エンターテイメントをはじめ、生活、スタイル、自然環境、世界のニュース、お笑いなどの幅広い分野を扱う。
略称はハフポスト、ハフポ。
本家アメリカ版のほかにイギリス、カナダ、フランス、スペイン、イタリア、日本、マグリブ、ドイツ、ブラジル、韓国版がある。
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